70．【マクロス】愛してるなんていえない

■ 28P ■ 2010/08/22 ■ 60g ■ 2mm ■ 300円

お前も結構本持ってんだよな」
「あって困る知識はないからな。エスコートにしたって、節約術にしたって」
　冷製のパスタを口に運びながらアルトは本棚を眺める。統一性のないチョイスは、それだけミハエルの知識の広さを物語る。
　エスコート、という単語には多少引っかかったものの、ふうんと受け流した。
「……ちぇ、姫は妬いてもくれないのか。俺以外のヤツをエスコートなんてすんな、とかさ、可愛いこと言ってくれるかと思ったのに」
　受け流したにもかかわらず、ミハエルの言葉に捕まってしまう。引っかかったのはその部分なんだけれど、素直に認めたりできなかった。
「べ、別に……妬くとかねえっ！」
「本当に？」
「だ、だって今は俺しかいないだろ！」
　アルトの口から飛び出した言葉に、ミハエルが息を呑んで止める。わずかに赤く染まった頬に気づいて、アルトはようやく自分がなにを口走ったのかを自覚する。
「ああああ、あの、今のは言葉のあやでっ」
「ダーメ、聞いたぜちゃんと。すげえ可愛いこと言ってくれた」
　昔はエスコートの相手がいっぱいいたのかもしれないけれど、今はアルトしかいないのだと、自信たっぷりに言われてしまった。
　それは実際間違いないのだけど、そう言わせてしまえるほど、自分の想いは彼に届いているのだと、嬉しくなった。