華家+透姫水の合同サークル オフライン情報ブログ
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「おつきあいを前提に結婚してください!」
バサ、と胸の前に真っ赤なバラの花束を突き出した。
自分の顔が赤くなっているか青くなっているかは分からないまま、ミハエル・ブランはきっちり四五度に腰を折る。
撃墜王と謳われる男の、一世一代の告白だ。
心臓はうるさいほどに波打って、花束を差し出す腕も震えて、汗まで出てくる始末。
それでも相手からは何も返ってこず、これは脈ナシかなと少しだけ息を吐いて、諦めかけた、その時。
はああああーと大きなため息が聞こえてきた。
「え、あの、……アルト?」
思わず体を起こして、告白をした相手―早乙女アルトに視線を向けたら。
「逆だろ、バーカ」
思い切り呆れた顔で悪態をつかれた。
バラの花束を、受け取られたあとに。
ミハエル・ブランは両手で顔を覆った。
こんなはずじゃ、こんなはずじゃなかったんだ、と何度も何度も心の中で後悔を繰り返す。
「まだ落ち込んでんのか? ミハエル」
そんな様子を、目の前の席に座る早乙女アルトは面白そうに眺めていた。
「あのな、落ち込みもするだろ。俺がどんな決心でお前に告ったと思ってんだ」
思わずテーブルをバンと叩き、言い返す。責められるいわれのないアルトは口を尖らせて、そんなの知るかとハニーミルクラテをすすった。
「昨日、珍しく今日の予定しつこく聞いてきたから何かあるんだろうなとは思ってたけど……」
明日は予定入ってる? 明日は家にいる? 誰かと約束してない?
そんな風に訊ねた昨日に戻りたい、とミハエルは心の底から思う。
一生に一度、使うか使わないかの勇気を振り絞って愛を告白するはずだった。クラスメイトでチームメイトで、同性である、早乙女アルトに。
好きだと自覚したのは結構前で、だけど言わずにおこうと決めていた。それなのに言わせてしまったのは、あまりにも可愛らしい仕種をしてくれるこの人だ。
い方、だろう。
だいたい、今のフロンティアでは同性婚はまだ認められていない。禁止されているわけではないが、世間の目はまだ厳しい方、だろう。
「……なあアルト、訊いていいか?」
「うん?」
「今こうしてデートしてくれてるってことは、その、……OKってこと?」
そう、ミハエルもアルトも男だ。普通であれば異性を好きになるよう、本能にインプットされているはずで、こんなに簡単に叶うはずではない。
だけどアルトは、花束を受け取ってくれた。
拒絶されて、避けられて、気持ち悪いと軽蔑されるシーンだって、何度かシミュレーションしてきたのに。
何がどうなって、今アルトとカフェなんかにいられるのだろう。
「結婚とかはまだ考えてなかったけど。まあお前の言いたいことは分かったからな」
まるで何でもないことのように、アルトはラテをすする。そこには照れもからかいもなく、あるのはただ呆れたような眼差し。
「え、……え? ちょっと待って? 突っ込むのそこだけなのか?」
本当は、結婚を前提におつきあいしてください!と言うはずだった。
言いたいのは、おつきあいをしてくださいというところ。
だけどアルトの頭にあるのは、結婚というところ。
「まさか、あのさ、俺の気持ち……知ってた?」
ひとつの可能性を考えて、ミハエルは慎重に訊ねる。押し上げた眼鏡の向こうに、戸惑ったようなみどりの瞳。
アルトはそれに、弾かれたように顔を上げた。ミハエルが想いを告白してから初めての、驚いた表情だった。
「え? お前もしかして、気づかれてないと思ってたのか?」
返ってきた言葉に、ミハエルは頭を抱えた。
「うそだろ……」
なんてことだ。なんてことだ!
まさかこの気持ちが気づかれていたなんて。
隠していたつもりだった。誰にも知られてはいけないと、密かに想ってきたはずだった。
「んー……でもなあ、お前ほど分かりやすいのもなかったんだけど」
「マジかよ、ちくしょう」
こんなことなら、悩んでないでさっさと告っていれば良かったと、ミハエルは眉を寄せた。
「いつ言ってくるのかなって思ってたんだ。お前ずっと悪友ヅラしてるし、必要以上に俺に構ってくるくせに、そういうの言ってこなかったし」
面白そうに笑うアルトに、心臓が撃ち抜かれる。
学校ではあまり見せない表情だ。もしかしたらこれからずっと、こんな表情を間近で見ていられるのだろうかと、らしくなく心が躍った。
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バサ、と胸の前に真っ赤なバラの花束を突き出した。
自分の顔が赤くなっているか青くなっているかは分からないまま、ミハエル・ブランはきっちり四五度に腰を折る。
撃墜王と謳われる男の、一世一代の告白だ。
心臓はうるさいほどに波打って、花束を差し出す腕も震えて、汗まで出てくる始末。
それでも相手からは何も返ってこず、これは脈ナシかなと少しだけ息を吐いて、諦めかけた、その時。
はああああーと大きなため息が聞こえてきた。
「え、あの、……アルト?」
思わず体を起こして、告白をした相手―早乙女アルトに視線を向けたら。
「逆だろ、バーカ」
思い切り呆れた顔で悪態をつかれた。
バラの花束を、受け取られたあとに。
ミハエル・ブランは両手で顔を覆った。
こんなはずじゃ、こんなはずじゃなかったんだ、と何度も何度も心の中で後悔を繰り返す。
「まだ落ち込んでんのか? ミハエル」
そんな様子を、目の前の席に座る早乙女アルトは面白そうに眺めていた。
「あのな、落ち込みもするだろ。俺がどんな決心でお前に告ったと思ってんだ」
思わずテーブルをバンと叩き、言い返す。責められるいわれのないアルトは口を尖らせて、そんなの知るかとハニーミルクラテをすすった。
「昨日、珍しく今日の予定しつこく聞いてきたから何かあるんだろうなとは思ってたけど……」
明日は予定入ってる? 明日は家にいる? 誰かと約束してない?
そんな風に訊ねた昨日に戻りたい、とミハエルは心の底から思う。
一生に一度、使うか使わないかの勇気を振り絞って愛を告白するはずだった。クラスメイトでチームメイトで、同性である、早乙女アルトに。
好きだと自覚したのは結構前で、だけど言わずにおこうと決めていた。それなのに言わせてしまったのは、あまりにも可愛らしい仕種をしてくれるこの人だ。
い方、だろう。
だいたい、今のフロンティアでは同性婚はまだ認められていない。禁止されているわけではないが、世間の目はまだ厳しい方、だろう。
「……なあアルト、訊いていいか?」
「うん?」
「今こうしてデートしてくれてるってことは、その、……OKってこと?」
そう、ミハエルもアルトも男だ。普通であれば異性を好きになるよう、本能にインプットされているはずで、こんなに簡単に叶うはずではない。
だけどアルトは、花束を受け取ってくれた。
拒絶されて、避けられて、気持ち悪いと軽蔑されるシーンだって、何度かシミュレーションしてきたのに。
何がどうなって、今アルトとカフェなんかにいられるのだろう。
「結婚とかはまだ考えてなかったけど。まあお前の言いたいことは分かったからな」
まるで何でもないことのように、アルトはラテをすする。そこには照れもからかいもなく、あるのはただ呆れたような眼差し。
「え、……え? ちょっと待って? 突っ込むのそこだけなのか?」
本当は、結婚を前提におつきあいしてください!と言うはずだった。
言いたいのは、おつきあいをしてくださいというところ。
だけどアルトの頭にあるのは、結婚というところ。
「まさか、あのさ、俺の気持ち……知ってた?」
ひとつの可能性を考えて、ミハエルは慎重に訊ねる。押し上げた眼鏡の向こうに、戸惑ったようなみどりの瞳。
アルトはそれに、弾かれたように顔を上げた。ミハエルが想いを告白してから初めての、驚いた表情だった。
「え? お前もしかして、気づかれてないと思ってたのか?」
返ってきた言葉に、ミハエルは頭を抱えた。
「うそだろ……」
なんてことだ。なんてことだ!
まさかこの気持ちが気づかれていたなんて。
隠していたつもりだった。誰にも知られてはいけないと、密かに想ってきたはずだった。
「んー……でもなあ、お前ほど分かりやすいのもなかったんだけど」
「マジかよ、ちくしょう」
こんなことなら、悩んでないでさっさと告っていれば良かったと、ミハエルは眉を寄せた。
「いつ言ってくるのかなって思ってたんだ。お前ずっと悪友ヅラしてるし、必要以上に俺に構ってくるくせに、そういうの言ってこなかったし」
面白そうに笑うアルトに、心臓が撃ち抜かれる。
学校ではあまり見せない表情だ。もしかしたらこれからずっと、こんな表情を間近で見ていられるのだろうかと、らしくなく心が躍った。
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